「おやつが好き」坂木司著
著者が子どもの頃、頂き物の空也もなかが出された。皮は香ばしいのに上あごにひっつかない。3つ目を食べていたら、母に「ああ、そんなばくばく食べちゃって……」ととがめられた。銀座の有名店のもなかなので、そんな食べ方をするものではない、と。
数年後、著者は歴史の教科書で空也の名に再会する。銀座の和菓子店「空也」の創業者は、空也上人が行っていた踊り念仏の「関東空也衆」のひとりだった。もなかの形も、踊り念仏の時に叩く瓢箪がモチーフだと知った。(「空也―空也双紙と黄味瓢」)
他に、維新號の中華まんや、熊本県の風雅巻きなどに関するエッセーや、短編小説など、おいしいもの満載で肥満や糖尿病の人には目の毒な面白本。
(文藝春秋 1250円+税)