「やせる経済学」ロバート・バーネット、クリストファー・ペイン著、月沢李歌子訳
減量を成功に導く知識は、栄養学か、はたまた運動科学か。本書はそれを、経済学であると断言している。
私たちが食べ過ぎてしまう理由は、経済学で解明することができる。それは、過去半世紀の間に食べ物の値段が下がり、供給が増え、大量消費が可能になったという単純な理由だ。安い食べ物が押し寄せてきたら、たとえ高カロリーでもその誘惑に勝つことなどできない。しかし、経済学の知識を武器にすれば、必要以上に食べ物を買い込んでドカ食いするという行為とは、決別することが可能になるという。
まず知っておきたいのが、ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンが提唱した「システム1」という直観的な脳の働きだ。曖昧さを無視して真実を錯覚させるという特徴があり、食品の表示や広告はシステム1に訴えるように作られているのだという。
例えば、脂肪分が少ないとうたわれたスナック菓子だ。私たちはこの商品を見た瞬間、ヘルシーだと思ってしまう。しかし実際には、野菜や果物と比べたらまったくヘルシーではない。そのことに思い至らず直観的に“ヘルシーだから買おう”と思ってしまうのは、システム1をくすぐる売り方に乗せられているためなのだ。
スーパーのレジ横の菓子類に手を伸ばしてしまうのも、行動経済学では当然のこと。買い物カゴが商品でいっぱいになると、私たちは追加される商品の金額やカロリーを気にしなくなるのだという。
経済学を知れば“買わせられている”ことに気づき、食べ過ぎ防止にもつながる。食料品はネットで買う、お得感を装う食品には手を出さないなど、日々できるひと工夫も紹介。新しい切り口の減量法、試してみては。 (ダイヤモンド社 1600円+税)