「しつこい不調の原因は『慢性上咽頭炎』だった!」堀田修著
頭痛やめまい、不眠、全身倦怠感、胃部不快感など、確かに体の不調があるのに、異常が見つからない。軽いうつから来るのではと診断され、抗うつ剤を処方されたが症状は改善されない……。このような悩みに対して、医師である著者が可能性を提示するのが、慢性上咽頭炎である。
上咽頭とはのどの上の部分、いわゆるのどちんこの裏側だ。上咽頭でウイルスや細菌が増殖し、鼻水やせき、のどの痛みなどの症状が表れるのが急性上咽頭炎、つまり風邪である。これに対して慢性上咽頭炎は、ウイルスや細菌の持続的な感染が起こり、炎症が慢性化した状態を指す。
免疫システムが正常に働いていれば、風邪は簡単に治る。ところが、たばこの煙や粉塵などで上咽頭が常に刺激されている場合や、慢性的なストレス、低気圧や寒冷、そして睡眠不足などの要因によって、慢性化してしまうことがある。
とはいえ、上咽頭とは関係のなさそうな体調不良にまでつながるのはなぜなのか。上咽頭には刺激を伝達する神経線維が集まっており、炎症が長引くことで神経刺激による片頭痛が起こったり、肩や首の緊張からこりも生じやすくなる。また、上咽頭の神経線維には副交感神経の主体となる迷走神経の末端が分布しており、慢性的な炎症が自律神経に悪影響を及ぼす。すると、めまいや不眠、胃腸障害をはじめとする、さまざまな不調につながってしまうのだ。
慢性上咽頭炎は、生理食塩水による鼻うがいをすることで改善する可能性が高い。セルフケアでよくならない場合は、上咽頭に直接薬液を塗るEATという治療が耳鼻科などで受けられる。しつこい不調に悩まされているなら、慢性上咽頭炎を疑ってみては。
(学研プラス 1100円+税)