「聞こえの悪さがボケの始まり」坂田英明著
早い人では40代から始まる「老人性難聴」。内耳の蝸牛にある有毛細胞の数が、年齢とともに減少していくことが原因である。年を取れば多少耳が遠くなるくらい仕方がないと思うかもしれない。しかし、認知症とも関係が深いと聞けば、放ってはおけないはずだ。
耳からの情報が減少すると、脳に対する刺激も減少する。誰かと会話をするとき、耳から言葉を捉えると大脳がフル回転して最適な言葉を導き出している。音楽を聞けば、歌詞の意味を考えたり、楽器の音を聞き分けたり、懐かしい記憶を手繰り寄せることもある。音が聞こえにくくなると、これらの作業をする機会が激減し、使われなくなった脳は衰えるばかりだ。
また、老人性難聴の場合、高い音から聞こえにくくなるという特徴がある。高い音には脳を刺激して気持ちを高める作用があるが、これが聞こえにくくなると脳が常に休んでいる状態となり、認知機能にも悪影響を及ぼす。
加齢が原因の老人性難聴だが、防ぐことは不可能ではない。近年の研究では、細胞死を引き起こすBak遺伝子が内耳の有毛細胞を破壊することが分かっており、Bak遺伝子は活性酸素によって活発に動き出すことが明らかになってきた。つまり、活性酸素の発生を抑える生活習慣が、老人性難聴の発症を遅らせることに役立つわけだ。
まずは、たばこをやめること。喫煙は体内に活性酸素を劇的に増やしてしまう。紫外線を浴びることでも活性酸素は増えるため、男性でも日傘や日焼け止めクリームを使うべきだ。抗酸化作用の高いビタミンEが豊富なカボチャやアボカド、ナッツ類を取るのもいいだろう。
“聞こえる”ということの重要性を再認識したい。
(小学館 1300円+税)