「暁天の星」葉室麟著
明治21年、黒田清隆内閣で、陸奥宗光は特命全権大使としてワシントンに赴任した。太平洋を渡る船の中で、陸奥は妻の亮子に、幕末は尊攘派と徳川幕府、明治には新政府と不平士族との闘いだったが、これからは日本人として、諸外国との闘いが始まると語った。
ある日、駐米公使館のパーティーで、メキシコ公使のロメロと知り合った。ロメロは、日墨修好通商航海条約を結ぶべきだと言う。日本は欧米諸国に引け目を感じて、まずイギリスやフランスとの不平等条約を改正しようとしているが、欧米諸国以外の国との交渉を優先すべきだと。
「日本人外交官」として不平等条約の改正に取り組んだ陸奥宗光の生涯を描いた未完の大作。他に短編や細谷正充の解説を収載。
(PHP研究所 1700円+税)