移民とニッポン
「団地と移民」安田浩一著
昨年11月、閣議決定された入管法の改正。果たして日本社会は移民を受け入れることができるのか。
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早い時期にネトウヨ問題に迫った「ネットと愛国」で知られるルポライターが今度は「団地」に迫った。前の東京オリンピック当時、人々の輝かしい憧れだった団地。
しかしいま、そこは高齢者と日本語の不自由な移民らが集住する社会の陰部になっている。広島では爆心地のすぐ近くゆえに「原爆スラム」と化していた基町(もとまち)団地が、いまは中国残留帰国孤児の集住地になっているという。
またフランスではパリ郊外にある団地が移民の集落と化し、華やかな「おフランス」のイメージとは対極の様相を見せる。共産党ですらフランスの中流階級の支持をとりつけるのに忙しく、移民らにかまう時間はないといわんばかりの態度をとる。リベラルが頼りにならなくなっているのは世界的現象でもあるわけだ。
全6章いずれも、新しい発見と鋭い指摘にあふれている。 (KADOKAWA 1600円+税)
「移民解禁」永井隆著
フリーの経済記者として長年、産業界を取材してきた著者は、日本国の移民政策の発想を根本から見直さないかぎり将来の展望はいつまでも開けない、と直言する。
今回の入管法で「特定技能」を2種類に分けたはいいが、政府は相変わらず「移民政策ではない」と言い張る。しかし産業界では既に90年代から労働市場を開放すべきだと、奥田トヨタ自動車社長(当時)はじめ明言していたのだ。そうした声に直接触れてきた著者は、日本経済が「負け続けて」いるのは「移民を回避していたから」とも言う。
あくまで少子高齢化社会の労働問題として、明快な主張を展開している。
(毎日新聞出版 1500円+税)
「移民労働者は定着する」田村紀雄著
数年前、映画化されて話題になった「バンクーバーの朝日」は明治期にカナダへ移民した日系人の野球チームの物語だった。本書は昭和11年にバンクーバーで創刊された日本語週刊新聞「ニューカナディアン」の歴史をたどり、差別に耐えながらも地元社会にゆっくりと溶け込み、戦後は政府の高官や実業家、ジャーナリスト、学者らを輩出した日系人社会の素顔を浮き彫りにする。
移民は単なる労働力ではなく、ひとりの人間、生活者なのだと静かに説く。 (社会評論社 2300円+税)