「バッドボーイ」ジム・トンプスン著 土屋晃訳
ジム・トンプスンは若い頃、バーレスク劇場で切符のもぎりをやったり、キャンディーを売ったり、ショーに出たりしていた。ある日、どことなく見覚えのある若い男がキャンディーを1箱買って、10セントを探していたが、やがて5ドル札を出してお釣りをせかした。ジムが釣り銭を勘定すると男はポケットから10セント硬貨を探し出し、「あんたの10セントだ。5ドルは返してくれないか」と言ってジムの手から紙幣を引き抜いた。まるまる5分経ってから、ジムは4ドル90セントをだまし取られたことに気づいた。ジムが男を捜すと、男は笑顔で5ドル札を掲げ、「ちょっと練習しただけさ」と言った。
ジム・トンプスンの若き日を描く自伝的小説。
(文遊社 2500円+税)