「盲剣楼奇譚」島田荘司著
東京大学近くの画廊で、刑事の吉敷竹史は一枚の日本画に見入っていた。それは赤ん坊を背負った美男の剣士で、絵を描いた艶子によると、10歳のときに見た「盲剣さま」を描いたのだという。
艶子は江戸時代から続く金沢一の芸者置き屋「盲剣楼」の一人娘。終戦直後の昭和20年、無頼の徒に占領された楼に伝説の「盲剣さま」が現れ、一瞬にして5人の男を斬殺した――と。
翌日、艶子の孫娘が誘拐される。犯人は「盲剣さま」に斬られた一味の生き残りで、斬った者を連れて来るよう命じる。
吉敷は70年前の「盲剣さま」事件の関係者に会うため、金沢に舞い戻る。
吉敷竹史シリーズ20年ぶりの新作長編。
(文藝春秋 2100円+税)