「日本近代文学入門」堀啓子著
明治から昭和前期にかけて活躍した12人の作家の人生の転機とその代表作誕生の舞台裏に迫りながらつづる近代文学史。
明治20年、二葉亭四迷が発表した「浮雲」は、堅苦しい書き言葉(文語)で書かれていた小説に「言文一致体」という新しい文体を取り入れたことで近代小説の嚆矢(こうし)とされる。この作品で日本近代文壇の先駆者となった二葉亭だが、実は浮雲は、文章の書き方に悩み相談した坪内逍遥から、人気落語家・三遊亭円朝の落語通りに書いてみたらとアドバイスを受けて生まれたものだという。
その他、樋口一葉に小説を書くきっかけをつくった歌人・作家の田辺花圃、夏目漱石と探偵小説の父と呼ばれる黒岩涙香など、文豪たちの知られざる人間くさいエピソードが満載。
(中央公論新社 900円+税)