「オイディプスの刃」赤江瀑著
昭和3×年7月23日早朝、山口県の旧家の次男・駿介は、叔母・雪代と泰邦の情事を盗み見る。泰邦は、愛刀家の父・耿平が所有する名刀「次吉」の手入れのために滞在中の研師だった。
その日、昼寝から目覚めた駿介が、窓から中庭を見下ろすと泰邦が息絶え、そばには次吉を持った弟の剛生が立っていた。剛生が室内に入ると香子が庭に現れ、手にした刀で自らの命を絶つ。剛生が泰邦の命を奪ったと知った耿平は、妻と泰邦が心中したと警察に通報したのち、割腹自殺する。12年後、京都で夜の世界に生きる駿介に、腹違いの兄・明彦からエアメールが届く。手紙には出奔して行方が分からない剛生らしき男とフランスで会ったと記されていた。
7年前亡くなった作家が残した刀剣ミステリー。
(河出書房新社 980円+税)