「脳が若返る最高の睡眠」加藤俊徳著
入眠困難や途中覚醒など、睡眠に悩みを持つ日本人は2000万人にものぼる。本書では、不眠に対して脳という視点からアプローチし、脳内科医である著者が考案した「脳番地睡眠法」によって睡眠問題を解決に導く方法を解説している。
脳には1000億個以上の神経細胞があり、部位ごとにさまざまな機能を分担している。著者はこれらに“脳番地”と名付け、8つの番地に大別している。例えば、思考系脳番地は物事を考えるときに、運動系脳番地は全身を動かすときに、伝達系脳番地はコミュニケーションを取るときに働くエリア、という具合だ。
実は、これらの脳番地が日中にバランスよく使われないと、ぐっすりと眠ることができなくなる。睡眠とは、脳を休めること。ところが、使われない脳番地では眠る必要性が低下し、良質な睡眠が得にくくなるのだ。
脳番地睡眠法では、寝不足に陥りやすい脳番地を日中に集中的に使っていく。本来、私たちは日中に活動しながら、目で見て、耳で聞き、手足を動かし、誰かと会話をしている。そして脳の中では、視覚系、聴覚系、運動系、伝達系という4つの脳番地が使われている。しかし、定年を迎えるなどして外出や人と話す機会が減ると、これらの脳番地が使われず、眠る理由がなくなって、不眠につながりかねない。
そんなときは、日中に1時間程度歩くようにすると視覚系、聴覚系、運動系が使われる。そして、本を音読したり、誰かを喜ばせるために献立を考えて料理をすると、伝達系の刺激になるそうだ。
本書では、睡眠不足と認知症との深い関係についても解説している。脳をしっかりと使い、ぐっすり眠ることが、健康長寿の鍵になると心得よう。
(小学館 820円+税)