「医者はジェネリックを飲まない」志賀貢著
患者の負担減と医療保険財政の改善を図るため、国は2017年6月の閣議で「2020年9月までに、後発医薬品の使用割合を80%にする」と決定した。
後発医薬品とは、通称「ジェネリック」。最近ではCMなどでも耳慣れた言葉となっているが、実は医師も、そして製薬会社社員も、積極的にはジェネリックを飲もうとしない傾向にあるという。
日本では、新薬の特許期間は20年から最大25年。この特許期間が終了すると、他の製薬会社が先発医薬品と同じ薬を製造することが可能になる。同じとはいえ、添加物は先発医薬品と異なる場合もある。しかし、国の見解では「先発医薬品とジェネリックは治験学的に同等である」としており、多くの薬理学の研究者もジェネリックの安全性や効能などの品質は先発医薬品と変わらないと断言している。研究開発の費用も安く抑えられることから薬価も安くなり、いいことずくめのように見える。
しかし現場の医師たちは、患者に「本当にジェネリックは先発医薬品とまったく同じなのか」と質問されると明確な回答ができないはずだと、内科医歴55年の著者は言う。なぜなら、ジェネリックの製造過程や添加物などについてのエビデンスが、自信を持って答えられるほど揃っていないためだ。
実は昨年7月、高血圧治療のためのジェネリック「バルサルタン」から、発がん性物質が検出されて大問題となった。その後の調査で、発がん性物質は薬の原料となる原薬に含まれていたことも明らかになっている。
本書では、医療現場の葛藤や、原料の50%を輸入に頼っているなどジェネリックの真実も明らかにしている。自分の飲む薬の正体を、知らなかったでは済まされない。
(幻冬舎 1100円+税)