「日本夜景遺産15周年記念版」丸々もとお、丸田あつし著

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「日本夜景遺産」とは、一般社団法人「夜景観光コンベンション・ビューロー」が認定活動を行う「後世に伝え、残したい夜景」のこと。2004年に始まり、「自然夜景遺産」「施設型夜景遺産」「ライトアップ夜景遺産」「歴史文化夜景遺産」の4カテゴリーで、これまでに全国241カ所が認定されている。

 本書はそのすべての認定夜景を網羅した写真集。

「自然夜景遺産」の部ではじめに紹介されるのは、三重県の標高555メートルの朝熊山を縦走する「伊勢志摩スカイライン」からの夜景。鳥羽湾の沿岸に広がる市街地と湾内の島々や密集する家々の白い光の粒が美しい夜景をつくり出す。

 瀬戸内海国立公園のある香川県の半島形溶岩台地「屋島 獅子の霊巌」(写真①)から一望する讃岐平野は、青々とした薄暮の時間帯が観賞のベストタイム。また、黄昏に染まる瀬戸内海に目を転じれば、光量は少ないが、島々と海、そして航行する船舶の光が織りなす夜景も楽しむことができる。

 また、静岡の国立公園地帯を走るドライブウエー「伊豆スカイライン」からは、富士山の優雅なシルエットと相模湾を中心とした市街地の夜景との見事なコラボレーションを見ることができる。

 世界でも稀有な夜景観賞文化を有する日本には、ユニークな夜景が数多く存在するという。そのひとつが青森県の下北半島の主峰「釜臥山」の山頂からの夜景だ(写真②)。宇曽利山湖と大湊湾に挟まれて広がるむつ市街がつくり出す光景は、その優雅な形から「アゲハチョウの夜景」と呼ばれている。

 また、12年に香港、モナコとともに「世界新三大夜景」に選出された長崎県の「稲佐山」では眼下に広がる長崎港を中心とした大パノラマを望める。その夜景の中にはハートや馬、竜などの形をした影を見つけることができるという。

「ライトアップ夜景遺産」は、歴史的建造物や橋梁、タワーなどに光を投射することで輝きを増す夜景だ。

 国宝の松本城(長野県)や、東京のレインボーブリッジなどお馴染みの光景から、石川県輪島市の景勝地「白米千枚田」を舞台に2万5000個ものLEDが織りなすイベント「あぜのきらめき」など、大自然の中に出現する幻想的な風景も登録されている。

「施設型夜景遺産」には、大阪府の東大阪市役所22階の無料展望ロビーから見下ろす東大阪ジャンクションの圧倒的な存在感(写真③)や、屋上庭園「KITTEガーデン」からの東京駅と周辺ビル群がつくり出す最高級の都会的夜景、静岡の片道9・2キロの小さな私鉄「岳南電車」の駅舎や車両の光景と車内から望むライトアップされた工場群などの景観など、多彩な魅力に満ちた夜景が認定されている。

 どのカテゴリーの夜景も、それぞれが見応えがあり、現地でじかに見てみたい光景ばかり。空気が澄んで夜景がよりきれいに見える今の季節は、お出掛けには最適だが、寒さ対策は万全に。

 (河出書房新社 2600円+税)

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