「底辺キャバ嬢、家を買う」黒野伸一著
あさ美は、場末の激安店ながらナンバーワンを張るキャバクラ嬢。容姿には自信がないが、前職の地方銀行で面倒な上司に鍛え上げられたため、客あしらいでは誰にも負けない。自宅から通うあさ美だが、父親の太郎は勤務先でも女装を貫くようになり、母親の洋子はそんな夫や夜の仕事に転職した娘に理解を示さず、家庭内はぎくしゃく。
タワーマンションへの引っ越しを決意して、内見に行ったあさ美は、銀行員時代の後輩行員・正也が妻と歩いている姿を目にする。
正也は、あさ美が銀行を辞めることになった原因をつくった男だった。同じ頃、あさ美の客の邦彦は、高級住宅地に家を購入したために破綻の危機を迎えていた。
各人の家を巡るエピソードから、現代社会の問題が浮かび上がる連作長編。
(光文社 780円+税)