「永田町小町バトル」西條奈加著
西條奈加は、中山義秀文学賞を受賞した「涅槃の雪」や、吉川英治文学新人賞を受賞した「まるまるの毬」など、時代小説の作家として知られているが、本書は現代小説なので要注意。もっとも現代小説を書くのはこれが初めてではない。
現役キャバクラ嬢にしてシングルマザーのヒロイン、芹沢小町がなんと国会議員になってしまうという話である。区議でも都議でもなく、いきなり衆議院議員になってしまうのである。なるまでの話ではなく、これはなってからの話。彼女がなぜ衆議院議員になったかというと、ある目的があったからだ。それは、シングルマザーの生活がいかに大変かということだ。福祉行政がいかに遅れているか、著者は数字をどんどん並べて読者を物語世界に強引に引きずり込んでいく。
その寄り道、いや背景説明の量がケタ外れなので小説としてやや破綻しているとの指摘がされるかもしれないが、これは問題解決に向けて邁進する芹沢小町の熱量と解したい。彼女が区議でも都議でもなくいきなり衆議院議員になったのも、法律を変えて予算を勝ち取ることができるのは国会議員だけだからである。そのためなら彼女は何でもする気なのだ。ライバル党に小野塚遼子というやはり新人議員を配するのもいいし、脇役にいたるまでの人物造形もいい。
はたして芹沢小町の願いは成就するのか。ラストまで一気に読ませる「政治エンターテインメント」だ。
(実業之日本社 1650円+税)