「山岳遭難の傷痕」羽根田治著
1989年10月8日、北アルプスの立山三山を縦走していた中高年パーティーが遭難、10人中8人が死亡した。前日の天気予報では「明日、山は大荒れになる」と言っていたが、当日の朝は雲一つない快晴だった。だが、天候は午前9時ごろから急変し、季節外れの猛吹雪となる。空を見れば、層積雲の「土手」が見られ、天気の崩れが予想できたのに、彼らにはその知識がなかった。
10人は予定どおり縦走路をたどり、引き返そうという声は出なかった。下りで他の登山者に追い越されたが、救助を要請しなかった。内蔵助山荘のオーナー、佐伯常行は、引き返す決断力がなかったことを指摘する。
10件の山岳遭難を検証した登山者必読の一冊。
(山と溪谷社 1700円+税)