「東京裏23区」本橋信宏著
カフェやレストランなどを取り上げる街歩き本ではなく、殺人現場や遺体発見現場、事故現場などのダークなスポットを紹介した異色の街ルポ。第1話の世田谷区から最終話の江戸川区まで2年にわたって実話ナックルズ上に連載した23のルポが収録されている。
たとえば中野区編では、酩酊した黒木香がベランダから落下して負傷した中野ワールド会館、阿部定の働いていた料亭があった新井薬師の住宅街、女子中学生を2年監禁した東中野のマンションなどを巡る。さらに中野ブロードウェイが開業した1969年当時、青島幸男や沢田研二などの芸能人や文化人が在住したことや、早稲田通りに面した警察病院の敷地にスパイ機関として名高い陸軍中野学校があったこと、江戸時代には中野駅周辺には5代将軍綱吉が発布した生類憐みの令によってお犬様を養育するための30万坪にも及ぶ囲いが設けられ、その中で30万匹の犬が飼われていたことなどにも言及。
巻末には特別編として、著者と副編集長、五十嵐泰正・筑波大准教授の3人による鼎談も掲載されており、普段の街とは全く別の姿が見えてくる。
(大洋図書 1500円+税)