「花になるらん 明治おんな繁盛記」玉岡かおる著
明治35年秋、貿易商高倉屋の4代目義市は、伏見の別荘で母・雅の古希の祝いを催す。元勲山県有朋ら招待客は、美術工芸で世界に名を馳せる高倉屋の贅を尽くした別荘に感嘆。高倉屋は、もともとは雅の父母が京都の町中で始めた呉服古着屋だった。それを雅が婿養子の夫らと大きくし、いまや万博にたびたび出品し入賞を果たすまでになった。
翌日、娘の孝子が雅を訪ねてくる。孝子の浮かない顔に、雅は孝子の夫・誠一郎の浮気を確信する。皇居造営御用の受注が増え進出した東京店に出張する機会が多い誠一郎は、向こうに女がいるようだ。その苦しみは雅もかつて味わったことだ。雅の脳裏にこれまでの人生が蘇る。
一代で呉服商を皇室御用達百貨店に育て上げた雅の人生を描く時代長編。
(新潮社 800円+税)