どうなる米大統領選

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「アメリカ大統領選勝負の分かれ目」大石格著

 コロナ対策の失敗で急速に旗色が悪くなってきたというトランプ政権。果たして今年の大統領選はどうなるのか。



 世界中の話題を集める米大統領選だが、仕組みはわかりにくく、特殊すぎる政治風土も予測不能感をかきたてる。その代表が4年前のトランプ当選の衝撃だろう。本書はワシントン支局長も務めた日経新聞の幹部記者が解説する今年の大統領選のキモである。

 貧困層の多い民主党の投票率を下げるために、共和党系の州では車を持たない黒人有権者に不便な投票所が設けられたりする。明らかな不公平が平気で行われるわけだ。また前回選挙でヒラリー・クリントンが負けたのはトランプという異端相手に「ヒラリーで決まりだよね、という刷り込み」があったという。

 もともとマイノリティーの寄せ集めの民主党は上層部による有力候補への誘導が激しい。しかしヒラリーはオバマ支持の黒人票を自分のものにできず、若者はサンダース支持に回り、上層部の誘導は効果がなかったのだ。

 著者は「選挙取材が好き」というだけあって細かなルールにも詳しく、米国民のパスポート保有率と投票の関係など面白いエピソードを織りまぜて解説する。大統領選より最高裁判事の任命や今年行われる州知事や州議会選挙のほうが長期的には大事など、日本では知られない話をわかりやすく紹介しているのもいい。

(日本経済新聞出版社 900円+税)

「最終決戦 トランプVS民主党」高橋和夫著

 民主党の予備選挙で若者層の絶大な支持を集めながら、予想外のコロナ禍で撤退したサンダース上院議員。しかし国際政治学者の著者は、民主党の中で最もリベラルな立場にあるサンダースの主張こそが今年の大統領選の隠れた争点なのだという。

 ニューヨークのユダヤ系移民家庭に生まれたサンダースはシカゴ大卒業後にバーモント州に移住し、泡沫候補として選挙に出馬し始める。本書は経歴をこまかくたどって、弱小に見えるサンダースが多数の修羅場をくぐって政治センスを身につけたことを明らかにしている。特に第3党から出馬して地元の市長を4期も務めた経験は、やむなく妥協を重ねても声なき声を伝える点でブレないサンダースらしさの表れだという。

 それが今年の選挙戦で旋風を巻き起こし、彼の有力な後継者たちを出現させた。その将来こそが今年の大統領選の隠れた原動力なのだ。

(ワニブックス 890円+税)

「白人ナショナリズム」渡辺靖著

 トランプ支持者の中核にいるといわれるのがマイノリティーの進出でワリを食ったとひがむプア(貧乏)ホワイトら。しかし最近の右傾化は貧乏人の反発だけで起こったわけではないと解説するのが慶大教授の著者だ。

 アメリカの社会問題などでテレビ解説に登場することも多く、本書は現地取材した右傾化事情のリポートである。白人の愛国主義者といっても一枚岩ではなく、トランプに不信感を抱く例もあるという。それでもまとまるのは白人優越思想がおびやかされているという恐怖感があるから。人種差別ではなく「人種現実主義」を自称する一派もある。

 著者自身も時として彼らの主張に同意するところがあるようだ。

(中央公論新社 800円+税)

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