「京都に女王と呼ばれた作家がいた」花房観音著
京都ミステリーで人気の作家、山村美紗は、1996年に帝国ホテルで執筆中に亡くなった。中学の教師だった美紗にミステリーを書くよう勧めたのは同僚の教師だった夫、巍であった。巍はミステリーのトリックのアドバイスをするなどして美紗を支えた。
美紗の死の6年後、巍が美紗の肖像画展を開いたことを知って著者は驚いた。美紗は巍と別れて、同じ作家の西村京太郎をパートナーとしていたと思われていたからだ。大手マスコミは文壇タブーとして取り上げなかったが、ゴシップ誌「噂の真相」が隣同士の家に住む美紗と西村のスキャンダルを報じた。美紗はそれも武器にしようとした。
西村は後年、「男と女の関係があったときには、あの人の弱さには気づきませんでした」とスキャンダルを肯定し、美紗をモデルにした「女流作家」を発表した。
2人の男に支えられた「ミステリーの女王」の評伝。
(西日本出版社 1500円+税)