「絶景本棚2」本の雑誌編集部編
本棚を見ればその人のことが分かる――などとよく言われるように、愛書家や読書家でなくとも他人様の本棚の中身は気になるところ。本書は、無類の本好きや本に関わる仕事をしている人たちの本棚を拝見するビジュアルブックで、雑誌の人気巻頭企画の書籍化第2弾だ。
冒頭に登場するのは、作家の夢枕獏氏の書庫だ(写真はすべて中村規)。3年前に新築した自宅の1階と2階に設けられた書庫は、それぞれが20坪ほどという広大なもので、1階は、明治・大正時代風、2階は小学校の図書館をコンセプトに、天井までの作り付けの本棚に整然と本が並ぶ。
源氏物語などの古典や名作歌舞伎、泉鏡花など仰々しく並ぶ全集の合間に「家庭医学館」や「現代漫画博物館」なる別ジャンルの本が差し込まれ、その違和感がなんとも面白い。
また別の棚の「名僧百人 古寺名刹百選」というムックの数冊隔てた隣には「SF百科図鑑」、そして1冊おいて「韓国の本」と背表紙を読んでいるだけで、これらの本が作家の頭の中でどのようにつながり、この場所に収められたのかを想像してしまう。
SF評論家の水鏡子氏が退職金をはたいて建てた書庫は、収納可能冊数なんと10万冊。床面積22坪の空間いっぱいに移動書架が配置され、専門のSFの他、さまざまなジャンルの4万冊が収められている。中にはブックオフで100円で入手した「オックスフォード・カラー英和大辞典」や「世界動物文学全集」などもあり、「100円で買うたんやって自慢するため」値札シールも貼ったまま。本に阻まれ書庫に閉じ込められても大丈夫なように、中から助けを呼ぶサイレンまで取り付けられたこの書庫の他にも5万冊分を収容できる書庫・書斎があり、この先30年、今の調子で買い集めても大丈夫だそうだ。
もちろん、こうした整然とした本棚だけでなく、古本屋ツアー・イン・ジャパンこと、グラフィックデザイナーの小山力也氏のように1万冊もの本が床一面に横積みされた自宅兼仕事場のように、読者が怖いもの見たさで期待するような「本棚」もある。
他にも、軍事関係と近現代史関連の書物で埋め尽くされた出版社の営業部長・中澤真野氏や、チャペックの装画本やソ連の絵本などさまざまな言語の本が並び「ほぼ読まないけれども、手放すと二度と手に入らない可能性が高い本が死蔵されている」歌人・穂村弘氏の本棚など、それぞれの個性がにじみ出る。
並べ方も人それぞれ、23区すべてに住むことを目標に友人知人の家を渡り歩いた末に、新宿に居を定めてまだ蔵書が400冊ほどの栁下恭平氏は、読んだ順番に並べる。読んだ順番を覚えておきたいからだそうだ。
推理作家の太田忠司氏の書棚には、結婚する際に妻が「これは絶対」と持参した本と自分の分と同じチャンドラーの本が2冊ずつ並んで28年になる。
やはり本棚を見ればその人のことが分かるというのは本当のようだ。
(本の雑誌社 2300円+税)