本橋信宏(ノンフィクション作家)
12月×日 還暦を4つ超えたいま、同世代の心身が気になる。
ここに来て同世代が点鬼簿に相次ぎ記されていくのだ。健康でなければ、何事も進まない。30代のころからのジム通いと散歩が私の健康法だ。
私と同い年のコラムニスト・小田嶋隆がこの10年間にツイッターで発した膨大なツイートを30代の若手ライター・武田砂鉄が厳選し、「災間の唄」(サイゾー 2000円+税)を上梓した。
<生命の軽視。自己犠牲の美化。暴力賛美。身分秩序の全面肯定。男尊女卑。血統重視。形式主義。個性圧殺。集団主義。横並び主義……日本人のいやなところはほとんど武士道由来な気がしますよ。>
日本人は武士道というと大甘になる。おかしな話だ。さすが小田嶋隆。鋭い。
12月×日 同世代といえば、明石家さんまのしゃべりは絶好調である。お笑い怪獣、国民的お笑い芸人、日本で最も露出の多いテレビスター、トークの魔術師。
さまざまな称号を冠せられた稀代の人物のヒストリーを丹念に調べあげ1冊にまとめた記念碑的書がエムカク著「明石家さんまヒストリー1 1955~1981『明石家さんま』の誕生」(新潮社 1800円+税)。
著者のエムカクは、1973年生まれ、明石家さんま研究家・ライター。よくぞここまで掘り起こして書いたものだ。
同書によれば、さんまTVデビューは1976年1月、「11PM」。読売テレビにて生放送された、20歳を迎える上方落語家たちがトークする「落語家の成人式」だった。さんまは目立つために赤いブレザーを着て出た。
この放送回、私も憶えている。司会の藤本義一が不機嫌そうに「キミはよくしゃべるなあ」と言っていた。あの赤いブレザーが後の国民的お笑い芸人だった!
12月×日 何の変哲もない街を散歩するのが好きだ。何気ない街と人にどれだけドラマを感じられるかを自分の感性の尺度にしている。まだ摩耗してない、と信じよう。