「漢文で知る中国」加藤徹著
前漢末に丞相を務めていた丙吉(へいきつ)は、部下を連れて出掛けたとき、都の大通りで喧嘩があり、死者やけが人が道に倒れているのを見たが、そのまま通り過ぎた。次に牛が舌を出してあえいでいるのを見て、牛の飼い主にどれほど歩いてきたのか尋ねたので、部下は、人より牛の方が大事なのかとあきれた。
すると丙吉は、こう言った。傷害事件の処理は治安担当者の仕事で、丞相の仕事ではない。だが、まだ暑くないのに牛があえいでいるのは、異常気象の兆候かもしれない。天地の陰陽の気を調和するのは私の仕事だ、と。(「丙吉、牛を問う」)
ほかに「白雲、尽くる時なし」など、使ってみたい含蓄に富んだ中国の名言集。
(NHK出版 1700円+税)