「レストラン『ドイツ亭』」アネッテ・ヘス著 森内薫訳

公開日: 更新日:

 主人公は、レストラン「ドイツ亭」を営む両親と姉と弟と一緒にフランクフルトに暮らす24歳の女性・エーファ。普段は、損害賠償の話し合いなどの際に駆り出されるドイツ語とポーランド語の通訳として働いている。

 ある日、エーファは恋人のユルゲンに結婚の申し出をしてもらうため初めて家に招いた。しかしそんな最中に上司から電話が入り、ピンチヒッターとして仕事に駆り出される。何もわからないまま出かけたエーファだったが、それはアウシュビッツ裁判に必要な通訳の仕事だった。家族やユルゲンに反対されつつも、エーファは義務感に駆られて通訳を続けることに。しかし、それは何も知らなかった自分を揺るがす事実を暴くことになっていく……。

 本書は、脚本家としてキャリアがある著者が初めて手掛けた小説だが大きな反響を呼び、発表後23カ国で翻訳された。フィクションとはいえ、ナチス犯罪追及センターを設立した実在の検事長をモデルにした人物も登場する。 

 負の歴史に加担した人々が、どのようにしてその事実に向き合うことができるのか、考えさせられるアウシュビッツ裁判をテーマにした小説。

(河出書房新社 2900円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 2

    “氷河期世代”安住紳一郎アナはなぜ炎上を阻止できず? Nキャス「氷河期特集」識者の笑顔に非難の声も

  3. 3

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  4. 4

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  5. 5

    大阪万博の「跡地利用」基本計画は“横文字てんこ盛り”で意味不明…それより赤字対策が先ちゃうか?

  1. 6

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  2. 7

    大谷「二刀流」あと1年での“強制終了”に現実味…圧巻パフォーマンスの代償、2年連続5度目の手術

  3. 8

    国民民主党は“用済み”寸前…石破首相が高校授業料無償化めぐる維新の要求に「満額回答」で大ピンチ

  4. 9

    野村監督に「不平不満を持っているようにしか見えない」と問い詰められて…

  5. 10

    「今岡、お前か?」 マル秘の “ノムラの考え” が流出すると犯人だと疑われたが…