「天を測る」今野敏著
日米修好通商条約の批准書を交換するために、外国奉行新見豊前守正興は米国艦のポーハタン号でアメリカに向かっていた。その警護と、海軍伝習の技術を試すために随伴航行する咸臨丸に、測量方兼運用方として乗っていたのが、小野友五郎だった。
友五郎が六分儀で天文観測していると、アメリカの測量の専門家、M・ブルックが声をかけた。クロノメーターを使わずに月距法を使っているのを時代遅れだと感じたようだ。
ある日、アメリカ側の計算した天文観測の数値と、日本側の数値が大きく違っていた。両者とも、自分たちが正しいと主張するが……。
論理力で欧米列強と対峙(たいじ)し軍艦を製造して近代日本の船出を支えた幕末の英雄の物語。
(講談社 1700円+税)