「陽眠る(ひねむる)」上田秀人著
1868年、鳥羽・伏見の戦いで敗北したが、大坂城の幕府軍は意気軒高だった。だが、徳川慶喜は2年前にオランダで造船された軍艦開陽丸で、兵を見捨てて江戸に逃げ帰る。
薩長の新政府は軍艦の引き渡しを要求するが、幕臣の勝海舟は開陽丸をはじめとして8隻を守り通した。新政府による江戸攻撃に備え、勝は開陽丸で慶喜を横浜に停泊しているフランス艦に運び、亡命させようと考える。海外で亡命政府をつくろうとしたのだ。
だが、兵力に勝る新政府軍に敗れ、徳川は70万石の一大名となった。家臣を養うために、勝は開陽丸で外国と交易をしようとするが、榎本武揚らは、開陽丸が死に場所を失うと反対する。
軍艦開陽丸を通して、幕末を生きた男たちを描く。
(角川春樹事務所 1700円+税)