「168時間の奇跡」新堂冬樹著

公開日: 更新日:

 主人公は、保護犬施設「ワン子の園」を運営している沢口涼也。ボランティアスタッフに支えられながら、理不尽に見捨てられた保護犬を世話し、大切に飼ってくれる里親を探す日々を送っている。かつての涼也は街金融の支店長として高給を得ていたのだが、自分の取り立てによって結果的に栄養失調で死んだ犬との出合いを契機に、その贖罪(しょくざい)として今の仕事を始めたのだ。

 そんなある日、恋人の華が働く動物愛護相談センターに、売れ残った犬や猫を繁殖業者と組んで闇業者に高値で売っているペットショップがあるという通報が入る。そのペットショップは、ボランティアスタッフでトリマーの沙友里が働いている店だった。実情を探ろうとした涼也は沙友里の協力を得て調査を始めたものの、ますます疑惑が強まり、街金融時代のツテを使い業者の実態を調べるのだが……。

血塗られた神話」で第7回メフィスト賞を受賞して以来、金融業界の闇を描いた作品などで評価の高い著者による最新作。ブラックな業界から一転してボランティアに身を投じた主人公の真っすぐな正義感と現実社会との葛藤が描かれている。

(中央公論新社 1870円)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 2

    米挑戦表明の日本ハム上沢直之がやらかした「痛恨過ぎる悪手」…メジャースカウトが指摘

  3. 3

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  4. 4

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  5. 5

    巨人「FA3人取り」の痛すぎる人的代償…小林誠司はプロテクト漏れ濃厚、秋広優人は当落線上か

  1. 6

    斎藤元彦氏がまさかの“出戻り”知事復帰…兵庫県職員は「さらなるモンスター化」に戦々恐々

  2. 7

    「結婚願望」語りは予防線?それとも…Snow Man目黒蓮ファンがざわつく「犬」と「1年後」

  3. 8

    石破首相「集合写真」欠席に続き会議でも非礼…スマホいじり、座ったまま他国首脳と挨拶…《相手もカチンとくるで》とSNS

  4. 9

    W杯本番で「背番号10」を着ける森保J戦士は誰?久保建英、堂安律、南野拓実らで競争激化必至

  5. 10

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動