「ごめんなさい、ずっと嘘をついてきました。」加藤就一著
東日本大震災から10年の今年、多くの人が新型コロナに気を取られているさなかに、日本政府は東京電力福島第1原発から排出されている汚染水を福島沖の太平洋へ放出すると発表した。コントロール下にあると日本の総理大臣が言い切ってしまった原発の真実の姿はどこにあるのか。本書は、「私=原子力発電所」がついてきた数々の嘘を告白し、懺悔(ざんげ)の形で書かれた告発の書だ。著者は原発ドキュメンタリー番組制作者で、14項目にわたる嘘の詳細をデータや取材をもとに赤裸々に語っている。
たとえば、原発は運転していなくても海にも空にも放射性物質を放出していることや、核廃棄物入りのドラム缶を千葉沖に海洋投棄していたこと、六ケ所村の再処理工場では原発以上の核の廃液を沖合に流してしまったことなど、唖然とする事実を紹介。
なお、多核種除去装置ALPSでも取り除くことができないトリチウムを含んだ福島の汚染水は、いくら薄めても廃棄する放射性物質の総量は同じであることに言及し、100年間大型タンクに保管した後に廃棄することで悪影響が減らせると提案している。
原発を巡る嘘と隠蔽のあまりの多さに身の毛がよだつ。
(書肆侃侃房 1760円)