「旅するカラス屋」松原始著
著者は動物行動学の研究者で、カラスの生態を研究している。調査や学会で旅をするときは旅先のカラスに出合うのを楽しみにしている。
ハンガリーでドナウ川のグリーン・ブリッジの方に曲がったとき、ベンチに日本では見たことがないシルエットの鳥がいるのに気づいた。ずんぐりしているがムクドリほど細長い顔ではない。銀白色の虹彩に黒い瞳、短いくちばし。あいつだ! まぎれもなくニシコクマルガラス。「ソロモンの指環」で読んでからあこがれ続けていた鳥が、目の前にいた。
他に、世界最大のカラスである知床のワタリガラス、ヨーロッパのズキンガラスなど、各地のカラスをめぐる旅のエッセー。
(角川春樹事務所 1650円)