「レッドネック」相場英雄著
米系大手広告代理店オメガエージェントに転職した矢吹蛍子は、ある日突然、上司からバンクーバーへの出張を命じられる。そこでケビン坂田という人物に会い、あるプロジェクトへの協力を要請して確実に約束を取り交わしてこいというのだ。ところが不可解なことに、上司はプロジェクトの概要やケビン坂田の詳細について、極秘プロジェクトであることを理由に何一つ教えてくれなかった。
怪訝(けげん)に思いながらも矢吹はケビン坂田に会う。契約にこぎつけたものの、依頼をメールで行わずわざわざ出向いたことや、ケビンに支払われるギャラが60億円もの大金であることから、矢吹は自分が危ういプロジェクトに関わっているのではないかと思い始める。やっとの思いでケビンから聞き出せたのは、「レッドネック」という、このプロジェクトの名前だけだった……。
誰もがスマートフォンを持ち歩き、SNSを利用する社会の中で膨大に蓄積されていく個人情報の行方について取り上げた問題作。都知事選挙が行われようとしている東京を舞台に、情報が金になり力となる現代社会のからくりが見えてくる。
(角川春樹事務所 1870円)