「恋狂ひ」宇佐美まこと著
42歳の鞠子は、11歳年下の紘太からプロポーズをされて戸惑う。紘太は、鞠子が真澄と共同経営する旅行代理店で働く部下で、鞠子は彼との結婚など考えたこともない。
そんな中、英国在住の姉の亜弥から相続した松山の元遍路宿をどうするか相談を持ち掛けられる。亡父は、大叔父から譲られたこの元遍路宿を気に入り、松山によく通っていた。
真澄が遍路を取り込んだ新たなツアーを企画。その下調べのために久しぶりに松山に飛んだ鞠子は、元遍路宿の古い机の中から一冊のノートを見つける。ノートは昭和15年、不義の関係を清算して死を覚悟して遍路を続けるリヨという女性の手記だった。
男との関係に揺れる鞠子の人生とリヨの遍路を交錯させながら、人間の性を描く長編小説。
(角川春樹事務所 924円)