「怪しくて妖しくて」阿刀田高著
ある日、仕事で松本に出掛けた「私」は、あずさ号で帰路に就く。甲府から乗車してきたすてきな帽子をかぶった女性客が隣席に座った。事故で電車が止まり、私は彼女を誘い私鉄に乗り換える。彼女は、私が持っていたチラシに興味を示し、一緒に古い映画の上映会に出掛けることになった。
小泉八雲の怪談を原作にしたそのオムニバス映画を見た後も、私から誘って佐藤洋子と名乗った彼女と何度かコーヒーや食事をともにする。洋子は私生活についてあまり話さないが、自宅で帽子を作っていると話し、いつも帽子をかぶっている。しかし、ある日を境に洋子と全く連絡が取れなくなってしまった。私は少ない情報をもとに彼女の行方を追う。(「黒髪奇談」)
短編の名手によるミステリアスな12編。
(集英社 990円)