「ひと」小野寺史宜著
あてもなく近所の砂町銀座商店街を歩いていた20歳の聖輔は、空腹に逆らえず総菜屋の前で立ち止まる。所持金は55円。コロッケなら買えるが、迷っているうちに最後の1個を他の客に買われてしまう。見かねた店主に50円でメンチカツを売ってもらった聖輔は、アルバイト募集の張り紙に気づく。
数週間前、鳥取に住む母が急死。既に父も亡くしている聖輔は、東京で生きていくと決めた。大学は中退したものの、この先について思い悩んでいたときにたどりついたのがこの総菜屋だった。
総菜屋の仕事にも慣れたある日、聖輔は砂町銀座をテレビで見て遊びに来たという高校時代の同級生・青葉と再会する。
さまざまな出会いによって人生が動きだす聖輔の一年を描いた2019年本屋大賞2位の感動作。
(祥伝社 759円)