「完本 アイヌの碑」萱野茂著

公開日: 更新日:

 アイヌ文化の伝承保存に尽力した著者の著作を集成した復刻版。

 ある冬、近所の古老を訪ねると、玄関にフレアュシニ(木いちごの枝)がさしてあった。風邪よけのまじないだ。古老の家は、他のアイヌの家同様、今は耐寒ブロックの現代風の家だが、忘れ去られたと思っていたこの風習を守っていた。そのフレアュシニを見た途端、著者の脳裏に四十数年前の二風谷の風景が鮮やかに蘇ってくる。板囲いの隙間だらけの家の囲炉裏の前で、祖母は糸をよりながら孫たちにアイヌ語でウウェペケレ(昔話)をたくさん聞かせてくれた。自分の民族の誇りを持つことができるようになったのは、そんな祖母のおかげだという。

 自らの人生を振り返りながら、アイヌ民族の背負った過酷な歴史や豊かな文化をつづる。

(朝日新聞出版 1100円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    元グラドルだけじゃない!国民民主党・玉木雄一郎代表の政治生命を握る「もう一人の女」

  2. 2

    深田恭子「浮気破局」の深層…自らマリー・アントワネット生まれ変わり説も唱える“お姫様”気質

  3. 3

    火野正平さんが別れても不倫相手に恨まれなかったワケ 口説かれた女優が筆者に語った“納得の言動”

  4. 4

    粗製乱造のドラマ界は要リストラ!「坂の上の雲」「カムカムエヴリバディ」再放送を見て痛感

  5. 5

    東原亜希は「離婚しません」と堂々発言…佐々木希、仲間由紀恵ら“サレ妻”が不倫夫を捨てなかったワケ

  1. 6

    綾瀬はるか"深田恭子の悲劇"の二の舞か? 高畑充希&岡田将生の電撃婚で"ジェシーとの恋"は…

  2. 7

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 8

    “令和の米騒動”は収束も…専門家が断言「コメを安く買える時代」が終わったワケ

  4. 9

    長澤まさみ&綾瀬はるか"共演NG説"を根底から覆す三谷幸喜監督の証言 2人をつないだ「ハンバーガー」

  5. 10

    東原亜希は"再構築"アピールも…井上康生の冴えぬ顔に心配される「夫婦関係」