「『自由』の危機」集英社新書編集部編
昨秋、菅首相は正当な手続きを経て推薦された日本学術会議の新規会員の任命を拒否。その具体的な理由はいまだに示されていない。これは「学問の自由」の危機にとどまらず、あらゆる「自由」に通底する問題である。本書は、この国で密かに進む「自由の危機」に対して各界の論客が警鐘を鳴らす論考集。
歴史学者の藤原辰史氏は、「日本学術会議への政治介入はあなたへの介入でもある」と指摘。ナチス政権による焚書のエピソードとともに、「本を焼く者は、やがて人間も焼くようになる」とのハイネの言葉を紹介し、批判精神に欠けた学者に囲まれた政府は「災厄であり、人々の生命を危険に陥れる」と糾弾する。
他にも津田大介氏やヤマザキマリ氏ら26人が、理不尽な権力の介入に異議を唱える。
(集英社 1166円)