「MINIATURE LIFE at HOME」 田中達也著
リモートワークに外出自粛、さらに外食や外飲みの自由まで規制され、圧倒的に増えた「おうち時間」。いろいろ試してみたものの、暇を持て余し、さすがに飽きたという人も多いことだろう。
しかし、作者は「家にいるのが大好き」で、「休日は一日中飽きもせず家の中で遊んでいる」そうだ。
ページを開けばその言葉に納得。そこには、家の中にあるさまざまなモノを、別のモノに見立て、物語のような世界を作り出した「ミニチュア写真」が並んでいる。
例えば、大きさの異なる牛乳パックのあの三角の天辺を赤や緑、青などに塗り、側面はバーコード部分を残して白色で塗りつぶせば三角屋根の家に。屋根に黒いストローを差せば、立派な煙突だ。バーコードはカーテンがかかった窓で、そんな家をいくつも並べて、周囲に雪をかぶったモミの木を配し、ストローの煙突の上にサンタクロースの人形を置けば、クリスマスの夜の出来上がりだ。
「サンタ苦労する煙突の細さ」とダジャレが利いたタイトルに思わずニヤリ。
ほかにも、竹を編んで作られたボックスの網目をマンションのベランダに見立てた「新竹(しんちく)マンション」、キャラメルの格子状の表面を書類キャビネットに、そしてキャラメルの箱そのものをオフィスに見立てた「おかしな収納」、ブックスタンドを並べてのぞいてみれば、どこかの王様が臣下にかしずかれながら回廊を静かに歩いている「本が倒れないための王宮処置」など、身近な品々が人形などの小道具や配置、そして視線と、ひと手間を加えるだけで大変身。
「家中のあらゆる場所が物語の舞台になり、あらゆる物がおもちゃに化ける」と語る著者の手にかかると、食卓の冷ややっこはプロレスのリングに、蚊取り線香は西洋式庭園、水を張った洗面台はリゾートホテルのプール、トイレの便器は雪山、そして赤ちゃんの紙おむつはサーフィンに絶好の大波にと早変わりしてしまう。
他にも、サンドイッチやスマホの充電器、ホチキスの針など、毎日のように目にしたり手にしているはずのモノたちが次々と登場しては別人の顔を見せ、目からうろこの気分になる。
同じポップコーンでも、入浴シーンでは泡になり、書斎ではアイデアに詰まってゴミ箱からあふれた紙くずになったりと、その発想力は無限大だ。
アットホームな世界を描いた作品が多いのだが、それだけではない。
冷えたビールが注がれたグラスを並べ、夕焼けに染まった誰もいない浜辺で抱き合うカップルがシルエットになった「ユウヒビール」や、黄色いセーターを用いて黄金色に染まったどこまでも広がる麦畑を舞台に、農業をしている祖父母と帰省した子ども一家との久々の再会を描く一景「ひさかたの孫との笑顔に“ニッと”する」のように映画のワンシーンのような「壮大な」作品もある。
まだまだ続きそうなおうち時間、こんな過ごし方もあるのかと家の中を見渡したら、あなたも何かひらめくかも。
(水曜社 2420円)