「死ぬまでに一度は行ってみたい絶景神社」 PHP研究所編
神社の入り口に立つ鳥居は、神域と人間界とのいわば結界。鳥居の向こうは神さまたちの世界だ。日本には8万社を超える神社があり、お社などの末社も含めるとその数は20万とも30万ともいわれる。
その中には、誰が、なぜ、こんなところに鳥居を建てたのだろうかと、感嘆してしまうような絶景の中にある神社がある。そんな各地の「絶景神社」とその見どころを案内してくれるビジュアルガイドブック。
「吉水神社」は奈良県の吉野山中腹に立つ。と聞けば、その絶景はすぐに思い当たるであろう。そう、桜だ。「一目千本」と呼ばれる「吉野の桜」は、その多くが日本古来のシロヤマザクラで、その数200種、約3万本に及ぶ。
桜の季節に、吉水神社の境内の展望所に立つと、海のように桜が眼前に広がるという。
同じ山中でも、兵庫県丹波市の「内尾神社」は参道脇に立ち並ぶ樹齢600年ともいわれる大杉に守られるかのようにひっそりと立つ。6月中旬から7月初旬、人けのなく静寂な境内がいつもと異なる賑わいを見せる。木立の合間から現れたヒメボタルが乱舞して、幻想的な光景をつくり出すのだ。
山とくれば、もちろん海もある。
福岡県糸島市の海の中に鎮座する名勝「筑前二見ケ浦」の夫婦岩は、古来、竜宮の入り口として親しまれてきた。一方、市内にある「櫻井神社」の社地(神社の所有する土地)として、人々の信仰を集め、岩の前には真っ白な鳥居がそびえる(表紙)。鳥居の足元を洗う真っ青な海とその白のコントラストが美しい。夫婦岩には日本の国土や木や風などの森羅万象をつくり出したイザナギノミコトとイザナミノミコトの2神が祭られている。夏至の頃には、この夫婦岩の間に夕日が落ちていくそうだ。
沖縄の「波上宮」も海の神社だ。
エメラルドグリーンに輝く海と白砂のビーチというまさに南国の海辺に突如現れたかのように、せり出す巨大な崖の上に社殿が立つ。ここは沖縄に古くから伝わるニライカナイ信仰の聖地でもある。
自然を畏怖し、敬う絶景の神社ばかりではない。
東京都江東区の「亀戸天神社」は、菅原道真の末裔が神のお告げによって1662年に創建したという古社。
天神ゆかりの花である梅はもちろん、東京一の藤の花の名所としても有名だが、近年は、東京スカイツリーのビュースポットにもなっている。
季節になると、ライトアップされた藤の花とスカイツリーとのコラボレーションが楽しめる。
また平安時代末期に創建の「御霊神社」(神奈川県)は鎌倉の静かな住宅街の端っこに鎮座している。アジサイの花でも有名な神社であるのだが、もうひとつの魅力は鳥居の目の前を走る江ノ電だ。鳥居と江ノ電との組み合わせが「撮り鉄」にはたまらない絶景スポットだという。
写真を見ているだけで心が洗われる43社を網羅。
いつか訪れる日を夢見ながら、コロナ終息を祈念して各社を紙上参拝する。
(PHP研究所 1540円)