株式アナリスト櫻井英明氏「株式は難しくない」
「兜町物語」清水一行著
(角川文庫)
証券取引所に場立ち(立会場)があったころ、兜町は熱気に満ちていた。場立ちにいる証券マンは手のサインで売買注文を出す。兜町界隈の喫茶店は早朝からにぎわい、昼休みの食堂は人だかり。
そんな時代を切り取ったかのような「兜町物語」は読み応えたっぷりだ。証券に人生をかけたサラリーマン。人間がうごめく世界。AIやIoT、DXなどが市場を支配する現在とは異なった時代背景を感じる。
この小説を読めば、アルファベットやカタカナのオンパレードとなっている株式の世界は、しょせん、人間が関わり、動かし続けていると理解できる。
株式は危険じゃないか、株式用語は難しくてよく分からないと、投資に二の足を踏んでいる人は本書にふれれば、「何だ、意外と簡単じゃないか」とハードルが下がると思う。
米ウォール街の実情を知るにはマイケル・ルイスの「ライアーズ・ポーカー」(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)がオススメ。魑魅魍魎の世界を味わえる。