「図説 人新世」 ギスリ・パルソン著 長谷川眞理子監修 梅田智世訳
人新世とは、人類の活動が地球に甚大な変化をもたらし、すべての生命に大きな影響を及ぼす可能性があることを地質年代体系に位置づけた造語。
学術用語として考案されたが、現在では人新世の議論を通じ、「人類は差し迫った重大な危機に直面しており、すぐに行動を起こさなければ手遅れになるかもしれない」という認識が共有されている。
本書は、そうした人新世という言葉が生まれた経緯と理由などを解説。
さらに極端な異常気象や氷河の溶解、多くの種が絶滅の危機にある海洋の現実、プラスチック問題など。人新世で起きている地球の変化と、それらがもたらす影響と課題について直視する。
水浸しになったベネチアのサンマルコ広場や、全身をネットにからめ捕られたウミガメ、解けて漂流する海氷の上のホッキョクグマなどの多くの写真や資料をもとに視覚的に地球の「今」を伝え、文明とその将来について再考を促す。
(東京書籍 3080円)