「和田誠展」 和田誠展制作チーム編
週刊誌の表紙や新聞コラムの挿絵など、この人の作品を目にしない日はないと言っても過言ではないほど、膨大な仕事を残し、2019年に亡くなったイラストレーター/グラフィックデザイナーの和田誠氏(1936年生まれ)。その仕事は、画業だけにとどまらず、映画や作詞・作曲、エッセーと、ジャンルを超えて広がり、いずれもが一流だった。
生前の氏によると、絵本を描くうちに文章も書きたくなり、童話を創作した延長で童謡の作曲を行い、ミュージシャンとの関わりからコンサートのポスターを制作、さらに舞台構成に演出、映画監督へと、ひとつの仕事が次の仕事へと「芋づる式」に広がっていったという。
本書は、氏の軌跡を残された膨大な作品とビジュアル年表でたどる作品集。春から全国各地を巡回予定の同名展覧会の公式図録でもある。
少年時代、家の中で絵を描いていることが多かった氏の最初の「作品集」は、なんと4歳の頃。父親が勤務する放送局のラジオ番組のプリントの裏に描いた絵を母親がとじたものだ。
驚くことに、イタチやイヌなどの動物の絵に交じって、盗賊団の親分が主人公の「悪者のユウバイセン」など、ストーリーのある絵本形式のものが6冊も残っているという。そして、中学1年のときには、雑誌「少年少女」で漫画を1年連載(原稿料代わりにその出版社が刊行する児童書をもらっていたそうだ)したというほどの早熟ぶり。
高校になると似顔絵に没頭。各教科の教師の似顔絵だけで作った時間割表は、写真店の息子の同級生が紙焼きにしてクラスメートに配ったという。
そうした氏のルーツともいえる作品から晩年の仕事まで、その活動を網羅した500ページを超えるファン必携本だ。
(ブルーシープ 4400円)