「風景印ミュージアム」古沢保著
「風景印」とは手紙やはがきなどに押される消印の一種。名所や特産品、著名人、歴史など、それぞれの地域の特色を盛り込んだ消印で、全国にある郵便局の半数弱、約1万1000局に配備されているそうだ。
本書は、直径36ミリの風景印の中に広がる無限の魅力を伝えるビジュアルガイド。
郵便局は、富士山や立山などの夏の間だけ営業する高山や、南極観測船内や観測基地、さらに東京高等裁判所や国会議事堂、皇居の中の宮内庁など、意外な場所にもある。もちろん、そこにも風景印がある。
そうした風景印を押してもらうには、郵便局に郵便物を持参して窓口で「風景印で出してください」とお願いすればいい。
しかし、それでは自分宛てに郵便物を出さない限り、風景印は手元には残らない。そこで、通常はがき(旧官製はがき)か、はがき料金以上の切手を貼った台紙を持参して同じように窓口で頼めば、押してもらえる。
また、遠方の郵便局に返信用封筒とともに台紙を送り、風景印を押して戻してもらう「郵頼」という方法もある。
郵便局がなくなったり、図案が改正されたりで廃印、改印もあり、機会を逃すと二度とお目にかかれない風景印もある。
著者がこれまでに集めた膨大なコレクションを紹介しつつ、切手と風景印をマッチングさせたり、挨拶状や四季の便りなどのTPOに合う風景印、さらに風景印を集めるついでに図案の題材となった場所などを訪ねる「風景印さんぽ」、そして海外の風景印まで。無限に広がる楽しさを紹介。
メールやラインで事がすんでしまう時代だからこそ、風景印が押されたはがきや手紙による、ひと手間をかけたコミュニケーションが、とてもお洒落に感じられる。
(G.B. 1980円)