「プロテストってなに?世界を変えたさまざまな社会運動」アリス&エミリー・ハワース=ブース著 糟野桃代訳
LGBTやSDGsをはじめ、#MeToo運動や人種差別への抗議運動BLM(ブラック・ライブズ・マター)など、さまざまな抗議運動によって人々の行動や社会が日々、変容していくのを私たちは実感している。
こうした勇気ある人々の声が社会を変え、歴史を動かしてきたのは今に始まったことではない。
古代エジプトでは、ピラミッドの建築労働者たちが、環境の改善を求めて作業を放棄して座り込みを決行し、追加の食糧支給を勝ち取った。
本書は、史上初のこのストライキに始まり、グレタ・トゥンベリさんの「学校ストライキ」(2018年)まで、社会に変革をもたらした社会運動の歴史を振り返るイラストテキスト。
紀元前2世紀、古代ローマでは、装飾品などを禁じる倹約令「オッピア法」に怒った女性たちが街に繰り出し、通りを占拠し、廃止に追い込んだ。現在のデモ行進と同じだ。
他にも、「非暴力・不服従」を貫き、インドの独立を勝ち取ったモハンダス・ガンジーの「塩の行進」(1930年)などの有名な抗議活動から、深刻な食糧不足に危機感を募らせたチリの主婦たちが鍋を木製スプーンで叩いて抗議した「カセロラソ」(1971~73年)といった、今もその手法が世界各地で効果的に使われる活動など。時系列で分かりやすく紹介。
こうした抗議活動によって、公民権や性的マイノリティーの権利が勝ち取られ、女性の投票権や8時間労働制をもたらし、独裁政権を倒して国家が解放されて、今のこの世界がつくられてきたのだ。
1人のリーダーが先導した例もあるが、何よりも大切なのは人々が力を合わせていく試みそのもの。主役は一人一人の個人であり、世界がこの先どうなるかは、私たち次第なのだと著者は言う。
(青幻舎 2200円)