「世界『失敗』製品図鑑」荒木博行著
古くは米国の自動車メーカー・フォードの「エドセル」(1957年)をはじめ、コカ・コーラの「ニュー・コーク」(1985年)、そして記憶にも新しいセブン─イレブン・ジャパンの「セブンペイ」(2019年)と聞いて何を連想されるだろうか。
これらは、世界に冠たる超有名企業が社運を懸けて挑んだ大プロジェクトだったのに、大失敗に終わってしまった商品やサービスの数々だ。
本書は、それぞれの事例がどのような製品(事業・サービス)だったのか、そしてそれはどのように失敗に至り、なぜ失敗したのかを徹底的に検証し、その失敗から学ぶビジネステキスト。
例えば「エドセル」。1950年代初頭、フォード社は自社の大衆車を購入した顧客が中間価格帯の車に乗り換える際に、競合社の車を選ぶ傾向が顕著となり、「他社をしのぐ圧倒的で革新的なモデル」を生み出そうと開発に取り掛かる。
巨額を投じ、販売網や広告まで周到な準備を経て、1957年、エドセルはついに売り出された。だが、発売からわずか2年あまりで生産中止に追い込まれ、その損失は実に3億5000万ドルにもおよんだという。
ダメなマーケティング事例として紹介されることが多いエドセルだが、著者はデザインや広告手法など目先のフェーズにばかり目を奪われてしまっていたことで、結果的にものづくりの優先順位が下がってしまったことに失敗の本質があると説く。
その他、アマゾンの「ファイアフォン」、ファーストリテイリングの「スキップ」など、事業構造そのものに学ぶ事例をはじめ、サムスングループの「サムスン自動車」やアップルの「ニュートン」など、合理性を超えた大きな力の存在による、運が悪かったともいえる失敗事例なども取り上げる。
(日経BP 1980円)