「ヒカリ文集」松浦理英子著
劇作家兼演出家の破月悠高は被災地の子どもたちに芝居を作る楽しさを知ってほしいと東北に行き、泥酔して凍死した。被災地に行ったのは、ヒカリがいると思ったからではないかと、残された身重の妻、久代は言う。未完の戯曲が残されていたが、久代は解散した劇団の元団員、鷹野裕に「あの戯曲の続き、書かない?」と言った。その戯曲の登場人物は劇団員をモデルにしていて、セリフも実際の会話が取り入れられていた。賀集ヒカリは劇団員のかつてのマドンナだが、男にも女にも興味と愛情と欲望を向けていた。優しいけれど、どこかで人を拒んでいた。
魅力的だけれど正体のつかめない「ヒカリ」の思い出を、友人たちがつづった文集。
(講談社 1870円)