「仮面」伊岡瞬著
識字障害を持ちながらもアメリカ州知事選のブレーンになった経験を売りにして大ブレークした作家・三条公彦は、今やテレビ出演のオファーが絶えない人気タレント。三条の識字障害を補うための通訳兼秘書として雇われた菊井早紀は、三条と共にテレビに出演することになり、早紀を売り出そうともくろむディレクターから声をかけられるものの、テレビ業界の裏や三条の過去について疑問を感じ始めていた。
そんな折、パン屋経営者の妻・宮崎璃名子の白骨死体が発見され、さらにその友人の主婦・新田文菜がある日こつぜんと消えてしまうという事件が起きる。文菜の失踪の捜査を担当する刑事の宮下真人巡査長と小野田静巡査部長は、文菜の実家に置いてあった私物の中に三条の著書3冊と、文菜がアメリカ留学中に撮った記念写真の中に璃名子が写っているのを見つけるのだが……。
「代償」などの大ヒット作を持つ著者による最新作。テレビと出版というマスメディア業界を舞台に、さまざまな人が世間に見せている仮の顔の下に何があるのか、事件をきっかけにして見えてくる人間の真の姿を暴き出している。
(KADOKAWA 1750円)