「人でなしの櫻」遠田潤子著
日本画家、竹井清秀の携帯に、父の秘書兼運転手の間宮から緊急事態だという連絡があった。高校2年のとき以来、連絡を取っていなかったが、マンションに行ってみると、父はかっと目を見開いたまま死んでいた。
リビングの奥の階段の上に部屋がある。間宮の制止を振り切って入ると、ベッドに少女が腰掛けていた。一糸まとわぬ姿でウサギのぬいぐるみを抱いている。その少女、蓮子は8歳のときに清秀の父、康則に買われ、11年間閉じ込められていたのだ。康則は蓮子の首を絞めようとして突き飛ばされ、テーブルに頭をぶつけて死んだ。警察の聴取を終えて帰宅した清秀は、画室に入って蓮子の絵を描き始める。
激しい嫌悪を覚えながらも、父が監禁していた少女に魅せられた画家の物語。
(講談社 1760円)