「人間関係を半分降りる」鶴見済著
近ごろ人間関係で窮屈さを感じることが増えた。共通の友人も多い知り合いが、しつこく絡んできたり自分の意見を押し付けてくる。一度腹を割って話すべきか……。
しかし本書を読み、その考えを改めた。ベストセラーとなった「完全自殺マニュアル」の著者は、人間関係はもっと楽に、少し離れてつながるぐらいでいいと述べ、“半分降りる”方法を教えてくれている。
昭和の頃は腹を割って話すことが大切だとされてきた。取っ組み合いの後でがっちりと握手、という漫画のアレだ。しかし、現実でケンカをすれば言われたことがいつまでも心に刺さり、関係修復不可能になってもおかしくない。嫌な感じのする相手とは距離を置くという自衛策で自分の心を守る。これは決して悪いことではないと著者は言う。
しかし、いきなり無視をするわけにはいかない。そこで、最低限の挨拶や返事はしつつ、話題を広げない接し方をするといいと本書。そしてSNSなどは見ないようにして、相手を思い浮かべる時間や回数を減らす。「心の距離」を取っていくのだ。なるほど、確かに今まで、嫌な相手ほど頭に思い浮かべる時間が多かった。しかし心の距離を離していくと、相手への気持ちも鎮火されていくようだ。
また、家庭と職場以外に、人とゆるく付き合うつながりの場をつくるのもいいらしい。居場所が少ないと、人間関係が窮屈な場でも離れられなくなるためだ。
そこで、町内会の会合や趣味の集まりにも顔を出し、ゆるい居場所を増やしてみた。すると、嫌なことがある居場所から気軽に離れられるようになった。窮屈な人間関係は自分の心掛けひとつで解消される。もっと身軽に生きてよいのだ。 <浩>
(筑摩書房 1540円)