「あの日を刻むマイク」武井照子著
戦時中にNHKアナウンサーとなり、戦後もラジオ番組の司会や制作に携わってきた著者の自伝。
日本でラジオ放送が始まった大正14(1925)年に生まれた著者の家の本家は、埼玉県北部の町で足袋の製造販売や藍布地の取次などを行っていた大店。本家と分家、住み込みの従業員も含め大所帯の中で自由奔放に育った。
しかし、次第に戦争の影が暮らしにもおよびはじめ、戦況の悪化で専門学校を繰り上げ卒業。学校の掲示板で見つけた放送員試験を受験してアナウンサーになる。1945年8月14日の夜、敗戦を知った上司は女子アナウンサーを集め、決起した反乱軍が放送局に乱入してきたときの対処法を説いたという。当時の放送局の様子や番組内容にも触れながら、ラジオと歩み続けてきた人生を回顧した貴重な証言。
(集英社 770円)