「満映秘史」石井妙子、岸富美子著
著者の岸氏は、かつて満州国に設立された国策映画会社・満州映画協会(満映)で働いていた映画編集者。特務工作に従事していた甘粕正彦が理事長を務め、スター・李香蘭が活躍した満映の実態や満州国崩壊後の軌跡はよく知られていなかった。本書は、ノンフィクション作家の石井氏が、岸氏が語る波乱に満ちた生涯とその満映の歴史をつづる聞き書き集。
家計を助けるため、14歳で映画会社で働き始めた氏は、昭和14年、満州にわたり満映に入社。
終戦後、旧満映は「東北電影」という中国人経営の映画会社に生まれ変わり、再雇用された日本人スタッフは、中国映画の草創期を支えたという。携わった映画や監督らとの思い出と共に、知られざる満映の歴史の空白を埋める貴重な史料。
(KADOKAWA 1320円)