「サバカン SABAKAN」金沢知樹著
小学校時代の友達、タケちゃんは家が貧乏で、一年中ランニングシャツで通学していた。家は廃虚のように傾いて菱形をしており、屋根はブルーシートだった。
夏休みのある日、タケちゃんは、ブーメラン島にイルカが来たらしいから見に行こうと僕を誘った。朝、4時起きして、自転車の2人乗りで大津町のタンタン岩まで行ったが、イルカはいなかった。
タケちゃんは石でイルカの絵を描いて言った、「これで誰か来ても大丈夫やろ?」。
別の日、「食べさせたいもののあるとよ」と言われてタケちゃんの家に行った。出されたのは握った酢飯に缶詰の「サバの味噌煮」をのせたもの。今まで食べたどの寿司よりおいしかった。
表題作ほか3編の物語。
(文藝春秋 1320円)